和歌と俳句

十六夜 いざよい

十六夜や四谷見附のみさごずし 万太郎

十六夜や佳き短冊に墨をする 秋櫻子

十六夜はわが寝る刻を草に照る 多佳子

十六夜や妻への畳皎々と 楸邨

十六夜のかかるまどゐの又ありや たかし

草照りて十六夜雲を離れたり 多佳子

十六夜の三島たち来て品川や 万太郎

十六夜や幾度妻をあざむきし 楸邨

十六夜や鉢なる蓮の露こぼれ 秋櫻子

十六夜の外に出てこころつまづきぬ 鷹女

十六夜や溲瓶かがやく縁の端 草城

十六夜やわれのみこもる部屋ほしき 信子

十六夜の母の前なる小盃 信子

十六夜の黒からぬ髪梳り 信子

厚き雲のべて十六夜の空明し 秋櫻子

十六夜の夜半の襖に照りにけり 秋櫻子

十六夜の琴の浦波ささやかず たかし

十六夜の梨地の海に打瀬舟 たかし

十六夜やいまだしめりて洗ひ髪 草城

十六夜の書斎に敷きし客布団 たかし

十六夜の雨瀧なせり森の前 秋櫻子

十六夜や古妻古き帯を締め 真砂女

十六夜や出先へかゝる電話かな 真砂女

十六夜やたえてはつゞく人通り 万太郎

十六夜やおもひまうけぬ雨となり 万太郎

六十に何の慕情ぞ十六夜 林火

十六夜やふるき坂照る駿河台 秋櫻子