したにのみ おもへばくるし たまのをの たえてみだれむ 人なとがめそ
古今集・恋
したにのみ 恋ふればくるし 玉のをの たえてみだれむ 人なとがめそ
水のあわの 消えでうき身と 知りながら 流れてもなほ たのまるるかな
古今集・恋
水のあわ 消えでうき身と いひながら 流れてなほも たのまるるかな
うきながら きえせぬ泡と なりななむ 長かれとだに たのまれぬ身は
古今集・恋
浮きながら けぬる泡とも なりななむ ながれてとだに 頼まれぬ身は
古今集・恋
雲もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ
今までに などかは花の 咲かずして よそとせまでに としきりのする
はるはるの 数はまどはず ありながら 花さかぬ木を なににうゑけむ
せみのはの よるの衣は うすけれど うつり香こくも なりにけるかな
古今集・雑歌
蝉の羽の よるの衣は うすけれど 移り香こくも にほひぬるかな
古今集・雑歌
ふるさとは 見しごとあらず 斧の柄の くちし所ぞ 恋しかりける
古今集・離別歌
下の帯の 道はかたがた わかるとも ゆきめぐりても あはむとぞ思ふ
しづくもて よはひのぶてふ 花なれば ちよの秋にぞ かげはみつらむ
後撰集・秋
しづくもて よはひ伸ぶてふ 花なれば ちよの秋にぞ 影はしげらむ
古今集・哀傷歌
ことならば 言の葉さへも 消えななむ 見れば涙の たきまさりけり
古今集・哀傷歌
寝てもみゆ 寝でも見えけり おほかたは うつせみの世ぞ 夢にはありける
とりもあへぬ 年は水にや 流れそふ 老いの心の あさくなりゆく
古今集・物名
しら露を 玉にぬくとや ささがにの 花にも葉にも 糸をみなへし