千載集・賀
君がためみたらし川を若水にむすぶや千世のはじめなるらん
君が代は松の上葉に置く露のつもりて四方の海となるまで
千載集・賀
落ちたぎつ八十宇治川の早き瀬に岩こす波は千世の数かも
誰がためと岩根の松はいはねどもけしきは御代のしるしとぞみる
かめやまのいはかき沼にゐるたづは久しき御代のしるしなりけり
そま川を誰そのかみにせきそめて絶えぬ岩間の瀧となしけむ
手向け草しげき玉江のそなれ松よにひさしきも君がためとぞ
君もしか松もふたばの昔より久しくも世をすぎにけるかな
雲のゐる松のうははのこだかさに空にぞ君が程はしらるる
君が代をいはぬにひけるあやめ草ねごとにみえぬ遙かなりとは
君が代は千舟のよするおほわたに立つさざなみの數も知られず
いしはしる瀧のそとものそなれ松かげをならべて幾代へぬらむ
くらゐ山ひさしき松のかげにゐて頼む身さへも年を経るかな
松かげのうつれる宿の池なれば水のみどりも千代やすむべき
君が代を口にまかせて祝ひつることばもおちず年つもりませ
千歳とも御代をばわかじ敷嶋や大和しまねし動きなければ
いつくしきすめらはしかも御たからのむれにむれても千代をふるかな
春日山いはねにおふる榊葉はいくよろづ世のしるしなるらむ
あしたづの来ゐるいはねの池なれば波も八千代の數にたつらむ
池にさす松のはひ枝にゐるたづを波のをるとも思ひけるかな