和歌と俳句

蓼の花 穂蓼

城あとや石すえわれて蓼の花 子規

一ツ家の家根に蓼咲く山路かな 子規

堀河の満干のあとや蓼の花 子規

井戸掘や砂かぶせたる蓼の花 子規

白水の行へや蓼の花盛り 子規

溝川を埋めて蓼のさかりかな 子規

鶏にくれる米なし蓼の花 虚子

蓼痩せて辛くもあらず温泉の流 漱石

左千夫
秋草の千ぐさの園にしみ立て一むら高き八百蓼の花


つゆしもの末枯草の淺茅生に交りてさける紅蓼の花

左千夫
百草のなべての上に丈高秀蓼の花も見るべかりけり


鮭網を引き干す利根の川岸にさける紅蓼葉は紅葉せり

暮れなんとしてほのかに蓼の花を踏む 漱石

料理屋に隣れば赤き穂蓼かな 碧梧桐

鶴の影穂蓼に長き入日かな 漱石

蓼の花草末枯れて水白し 碧梧桐

拾ひ残す穂蓼の上の落穂かな 虚子

砂遠し穂蓼の上に海の雲 龍之介

蓼嗅いで犬いつ失せし水辺かな 石鼎

花蓼や去年と同じふ石に咲く かな女