一葉
あら磯の松をよすがにのぼりけり嵐の後の冬のよの月
堂下潭あり潭裏影あり冬の月 漱石
大船や帆網にからむ冬の月 虚子
柝過ぎて後犬行くや冬の月 碧梧桐
啄木
しらしらと氷かがやき/千鳥なく/釧路の海の冬の月かな
間切る帆を見る我と影を冬の月 碧梧桐
納屋蔭に柴こぼれゐる冬の月 石鼎
煤流るゝ水と草原冬の月 碧梧桐
猫のゐて両眼炉の如し冬の月 鬼城
冬の月深うさしこむ山社 鬼城
塵溜に枯木影なし冬の月 石鼎
枯木より常磐木哀し冬の月 石鼎
光芒の中に星あり冬の月 石鼎
牧水
大きなる月にしあるかな冬凪の空の低きにさし昇りたる
牧水
こころよき寝覚なるかも冬の夜のあかつきの月玻璃窓に見ゆ
塀添ひに風流れをり冬の月 亞浪
松原にとまる電車や冬の月 禅寺洞
冬の月寂寞として高きかな 草城