和歌と俳句

早乙女 さおとめ

笠きて簑きて早乙女に唄なく 山頭火

早乙女にまちかく利根の鳰鳴けり 悌二郎

植ゑた田をまへにひろげて早少女の割子飯 山頭火

早乙女のふと顔あげぬよき器量 淡路女

早乙女に瀬田の競漕また発ちぬ 爽雨

早乙女の足を流れにひるげかな 爽雨

早乙女の小鈴をならす財布かな 蛇笏

月青し早乙女ら来て海に入り 波郷

山門に早乙女憩ひ高匂驪寺 風生

早乙女の裾を下して羞ぢらへり 誓子

早乙女を昼見きゆふべ月を見き 林火

早乙女の瀬石うつりにつづきけり 青畝

早乙女の笠あづけゆく君の堂 青畝

早乙女の汚れはげしく町に入る 誓子

明眸惜し汚れ尽くせる早乙女の 誓子

早乙女や街道の砂利いたがりつつ 草田男

田を出でて早乙女光る鯖買える 三鬼

早乙女に水きて青い職場和す 不死男

早乙女等榛の木道を次の田へ 立子

早乙女の母を柱にのびあがる 静塔

起ち直る草や早乙女の足過ぎて 波郷

早乙女は隠岐の國なる媼かな 青畝

早乙女や藤の花房髪に垂れ 秋櫻子

早乙女を中に畦ゆく村の者 青畝

青まほら成して早乙女ひきさがる 静塔

漂ひて早乙女の家水にあり 静塔

古町の筋早乙女に歩かるる 静塔