和歌と俳句

曼珠沙華 彼岸花

曼珠沙華塔得し道の楽しさに 多佳子

曼珠沙華海なき国をいでず住む 多佳子

曼珠沙華さめたる夢に真紅なり 多佳子

昨日見てけふ曼珠沙華みあたらず 楸邨

曼珠沙華最も遠く思ひ出す 楸邨

九十九里の一天曇り曼珠沙華 楸邨

曼珠沙華俘虜の尿は日にむかふ 静塔

曼殊沙華夫は見しとふ羨し 波津女

曼珠沙華けふは旅なる吾にもゆ 多佳子

まんじゆさげ雲の間より日の柱 林火

夕方は遠くの曼殊沙華が見ゆ 綾子

曼珠沙華蘂のもつれをほぐし終ふ 誓子

曼珠沙華咲けば悲願のごとく祈る 多佳子

曼珠沙華からむ藁より指をぬく 多佳子

昏くして雨ふりかかる曼珠沙華 多佳子

仏足に一本の曼珠沙華を横たふ 多佳子

四十路さながら雲多き午後曼珠沙華 草田男

いとどしき朱や折れたる曼珠沙華 草田男

二列の曼珠沙華路行方知らず 草田男

曼珠沙華悲しみこそは醒めきつて 草田男

花さかる茎のうすいろ曼珠沙華 蛇笏

老農の鎌に切られて曼珠沙華 三鬼