和歌と俳句

後藤夜半

海苔舟の棹さい出づる籬かな

久米の子ら更衣の野を焼ける見ゆ

涅槃図にまやぶんにとぞ読まれける

少年のこちらむきたる雛あそび

藪垣や見馴れたれども落椿

揩スけし母をしたがふ智恵詣

翠黛とひもすがらある桜狩

大顔をむけたまふなる寝釈迦かな

綻びてありたる梅のうてなかな

おのがじし道をひろへる花疲れ

ならびたる柳の糸の間かな

低きより柳の枝の垂れにけり

浮びをる甘茶の杓をとらへけり

彫みある寝釈迦のまとひたまふもの

三段となるところある糸桜

花御堂四つの柱見ゆるなり

獣に青き獅子あり涅槃像

鞦韆をすてたる人とつれだちぬ

前の人きらびやかなる花疲れ

空いてゐし床几にかけぬ花疲れ

麦踏のこちら向いてもただひとり

蛇の円かなる座や涅槃像

見下ろせる八幡の藪や春の山

春山に二十四孝の屏風たつ