和歌と俳句

五十嵐播水

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寒泳ぎはじまる水に東山

あそびゐし女の童も寒泳ぎ

裘ぬぎすてにけり寒泳ぎ

衣笠の山をうしろに冬籠

衢に出て提灯くらし寒念仏

八方へ射る芦の矢や追儺式

方相氏庭燎明りに構えたり

節分の春日の巫女の花かざし

年の豆春日の巫女にいただきぬ

渡御近き真夜の焚火にあたりけり

寒稽古始まる掲示つぎつぎに

暦売る家あり奈良の町はずれ

凍蝶をもとの所に置きて去る

返り花まことしやかに落花せる

一茎に龍鬚の実の瑠璃七つ

枯草に立てばほとりに雨の音

散りしきて月照りかへす銀杏かな

高々と空に生るる落葉かな

祭すみし城南宮の落葉かな

月さして昼のままなる落葉かな

門に来て深くなりたる落葉かな

門前に落葉を踏みて旅に出づ

みよしのの筏の水の落葉かな

佐保山の后の陵のうめもどき