和歌と俳句

源俊頼

来ぬもうし いささは待たじ 山里に つもれる雪は ともならぬかは

雪降れば あをばの山も みかくれて ときはの名をや けさはをるらむ

ながめやる 箱根の山を たがために あくれば雪の ふりおほふらむ

雪降りて 踏ままくをしき 庭のおもは たづねぬ人も うれしかりけり

わがこころ 雪げの空に 通ふとも 知らざりけりな 跡しなければ

雪をおもみ しだれるみさの 枝なれば さはるをかさに しづれ落つなり

冬来なば おもひもかけじ あらち山 雪折れしつつ 道まどひけり

いとどしく しどろにみゆる 刈萱の うれもとろはに 降れる白雪

ものおもふ 年は我が身に つもらずは まだみどり兒と いはましものを

みよのしの みなとなへつる しるしには 罪もや今宵 残らざるらむ

數そふと 歎くも知らぬ 年のうちに 急ぎ立ちぬる 春霞かな

あは雪も またふる年に たなびけば 頃まどはせる 霞とぞみる

言霊の おぼつかなさに をがみすと こずゑながらも 年を越すかな

行く年も 今宵ばかりに なりにけり 果てなきものは 我が身なりけり

さらひする 室の八島の ことこひに 身のなりはてむ 程を知るかな

ほどもなき ひと夜ばかりを 隔てにて 今日をもこそと いはむとすらむ