和歌と俳句

源俊頼

都には 忘られにける 身なれども 寒さばかりは 訪ね来にけり

むらさきの みかりはゆゆし ましろなる くちのはがひに 雪ちりほひて

金葉集・冬
はし鷹を とりかふ澤に 影見れば 我が身もともに とやがへりせり

みかりする 眞野の萩原 こゐにして はふしに鷹の ふやかはるらむ

日を経つつ かりくらしても かへるかな はとにかはりし 人もある世に

ゆふまぐれ はねもつかれに 立つ鳥を くさとる鷹に まかせてぞみる

千載集
ゆふまぐれ 山かたつきて 立つ鳥の 羽音に鷹を あはせつるかな

ひかげさす とよのあかりの みかりすと 交野の小野に けふもくらしつ

道すがら 枯野にたてる かほがはな 振り分け髪に 霜おきにけり

沖つ風 ふけひの浦の けはしさに なころとともに 千鳥たつなり

潮満てば 磯こす波に あらはれて ふけゐの浦に 千鳥なくなり

難波潟 あまのいさりに 立つ千鳥 いくたび磯を ひるがへすらむ

塩釜の 煙にまよふ 濱千鳥 おのが羽がゐを なれぬとやなく

あなしふく 雄島が磯の 濱千鳥 いはうつ波に たち騒ぐなり

難波潟 綱手になびく 葦の穂の うらやましくも たちなほるかな

蘆火焚く まやのすみかは 世の中を あくがれそむる 門出なりけり

からかみに 袖ふるほどは とのもりの とものみやつこ みひしろくたけ

ひかげさす をみのあかひも うちとけて 立ち舞ふ人を もてはやすかな

山たかみ 雪ふりぬれば 跡たえて 見し雲ゐとも おぼえざりけり

いかにせむ 灰のしたなる 埋火の 埋もれてのみ 消えぬべきかな