上雪を除け縄文の雪を舐む
ぬばたまの黒曜石の呼びし雪
大年にあり点点と日矢の郷
鐘の音をとどめて信濃年を閉ず
もがり笛左千夫に起り在りつづく
もがり笛信濃の教師耳かしこ
もがり笛息継ぐ茅野の尖石
本朝の雪達磨にてギリシア鼻
雪山に罪あり神父背向にす
敲くべき扉はなくて樹氷界
煙草火を吸ひて赤らむ樹氷園
樹氷林青き天路に出てしまふ
口紅を塗り足す樹氷林出づと
こごえては棟を寄せあふ諏訪どころ
氷波立つ男宮女宮とひきさかれ
戸障子を立てて神湖を凍らしむ
金屏風ひらく凍湖をくぎる幅
煮湯かけ石の凍解く御諏訪様
凍は吉神に焚火を賀しまつる
凍詣赤子黒目を両分に
会者定離死にてなくなる雪の塚
石棺も凍る蜆の湖の底
大鳥居霹靂と雪墜り落す
大凍小凍花時計保たれて
凍船の出る時刻なし花時計