和歌と俳句

平畑静塔

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馬首を釘付け積雪をいぶかしみ

百合の根を蹄は知らず雪の馬

枯すすき汽車に乗れずよ鈍の汽車

父祖以来雪の小山田つみ上げし

寒造米の滝より始動して

雨垂の散つて芳醇寒造

水桶の杉は赤らむ寒造

つぶやくや米の別れの醪室

倉柄杓今年酒なる香を支ふ

山垣の襟を重ねて神楽笛

おほらかに神代はみだら里神楽

陰ありて神楽の女神足蹴あげ

冬至るべき青天の村の柚子

幾太郎眉しかめせし冬日教室

窯出しの木の間を撰りて冬日さす

窯出しに松の焚火を庭燎とす

さむき過ぎ越し窯守は冬よけれ

雪だるま犬も民話の中にあり

炙りたる十指にてふれ益子焼

冬暖かに四方山話渋茶攻め

白鳥の下りしオアシスは鴨の沼

白鳥来里の子を芦がくれにし

白鳥よ北はまだらの汚れ雲

病むときもある寒燕を巣くはして

越冬の燕浜松市にまぎる