へろへろと走馬燈の游魚かな
おなじ絵の賣れのこりゐる走馬燈
よりそひて踊の顔を包むなる
踊らんと顔を包めばうつくしき
あらはれて踊の人数つづくなり
曼珠沙華消えたる莖のならびけり
ふたたびは来ることもなき栗の路
津の国の減りゆく蘆を刈りにけり
沢瀉のたぐひなるべし蘆を刈る
拾ひたる落穂のしべをおとしけり
拾ひもつ落穂の垂れてありにけり
毛氈をかけし床几や露の中
たくさんの墓燈籠をともすもの
友人のくぐりいでくる月の門
大いなる月の道あり家の前
大いなる燈籠の手の影法師
燈籠の仔細にうつる水に置く
燈籠のかぶりし波の見えて消ゆ
消えてゐし灯のもどりくる燈籠かな
白紙を張りあましある燈籠かな
十六夜の月の面を照らすもの
暗りをおもなひ上る居待月