曼珠沙華咲きそめし紅ほのかにて
喚聲をあげては隠れ秋の溪
地と水と人をわかちて秋日澄む
あさがほの大地になじむ花の瑠璃
淡々と夕影しみる稲の出穂
海澄む夜北港あげて流燈會
凪ぎわたる地はうす眼して冬に入る
神は地上におはし給はず冬の虹
遠めきて尖々の澄む八嶽の冬
ひとり踏む山墓の径芝の霜
霜つよし忿りをかへす天の壁
雪つむや亡き兒の形見歳古りて
寒埃りして老農が藁草履
雲みだれ瑠璃のぞきては雪後の天
晴雪に枯れ葉のしげき丘林
日りんに耐ふる雪嶺雲を絶え
野兎追うて雪嶺それし鷹一つ
やむ雪に鷹をはなちて釈迦の嶮
やまびこをこす一行に瀑の凍て
龍尻の渦しづかにて雪の中
雪嶺をわたる陽ここに四度の瀧
たち去るや又凍瀧をふり仰ぐ
山たかく湯瀧は雪の新しく
あゆむ娘ら温泉の雪光を四方にして