山棲みの畳青しも寝正月
八方の嶽しづまりて薺打
初富士に歳月つもる雪中廬
高原の年を新たに嶽を前
鐵塔も日も寒明の野の力
雪解する無閧フ谷に駒嶽の壁
芽木を透く谷川煽ち流れけり
春光の中に地の愛みなぎりて
春ふかむ大嶺孤つに雲の鳶
したたるとおもへばきゆる春の露
日の下に春の遅々たる地のねむり
花咲ける豌豆の葉に露の玉
とまるより妖しき光りつばくらめ
風光る海の二階のかもめどり
山ふかくあふるる泉櫻ちる
金華山囀りもなく塔かすむ
日りんのかすむ光りを浪にのみ
島々の花をなごりに瀬戸の潮
藤褪せし灯ともし頃の夕嵐
城内のなにか明るく暮の春
旅ここに寂光院は春の寂び
月てらす日の没るなべに比叡の春
翠黛をながむる犬に遅櫻