長谷川かな女
声からして歳暮の人となりしかな
あかつきの雪山の上星黄なり
頂の夕日わづかや雪の嶺
積雪の中に鳩鳴く枝のあり
なき母を知る人来たり十二月
源氏屏風に追儺の物の音しける
人並になりし五十の鮟鱇鍋
立冬の火焚けば映る民家かな
鎌倉の冬夜や五位の啼き渡る
餅さげて雪見る人の来りけり
尼眠る葎をくゞり笹子鳴く
鎌倉の古き冬苔石に真黄
大和より国原つゞき小春富士
牛蒡掘る傍を通り小春人
寒つよく花黄に暮るゝ梅林
起きし音に暗し師走の十五日
冬ぬくゝ柞に丘は透きゐけり
護謨の葉に蔭あり寒の入る夜かな
天上に咲く華挿頭し寒烈し
海岸に大廻りしぬ三の酉