生涯にまはり燈籠の句一つ
朝顔にしぼみ滲みて葉を染むる
四阿の岐阜提灯が揺れてきし
つぎつぎと茗荷の花の出て白き
草市につきし一荷は鶏頭花
大根を蒔いて蛙のとんでくる
この門の木犀の香に往来かな
食べてゐる牛の口より蓼の花
いちめんに菱採舟や潟暑し
菱舟の昼餉時なり潟暑し
尚一つむかごの蔓の立ちにけり
小浅間をつつむ煙や秋の風
一面の露の芝生の一葉かな
大いなる雲の出できし花野かな
糸瓜忌や雑詠集の一作者
雁の棹枯木の上に一文字
蟷螂やゆらぎながらも萩の上
蓑虫や吹き起されて石の面
大風に荒ぶ芒を刈りにけり
掛稲よりひたと落ちしは青蛙
芒野や浅間の煙吹き下ろす
芒より出で来し山羊の可愛らし