寒の内光るかまちに家の責
ゆく年の水月をみるふところ手
更闌けてかがり瞬く除夜の爐火
うつくしき僧の娘二人除夜の爐に
雪嶺にこころひかれて陽の歩み
風雪の光りみだるる冬木原
雪山に無韻の流れ一と筋に
霜柱掌に日りんが小さくなる
人責むるおもひ一途に霜夜かな
邯鄲をとめたる草も枯れはてぬ
茶の木咲きみそらはじめてみるごとし
橇馬に陽はかがやくも雪の涯
花嵐亡ぶるものは地に哭す
鏡立つ窗の乙女に花無慚
山つつじ海をかなたに午後の凪ぎ
天は瑠璃祈りを秘めて春の航
寧樂の春娘らとわかれて魚山行
くもりなき魚山のあそび松の花
尼僧院とうて魚山の春を趁ふ
翠黛に雲もあらせず遅ざくら
寒食や草生の院の寂光土
数珠の手に花種を蒔く尼ぜかな
ひとりねて尼僧のむすぶ春の夢
廊わたる尼袖あはせ若楓