和歌と俳句

加藤楸邨

満月の鳥獣戯画や入りつ出でつ

鳴かねば見えぬもののあるなり百舌鳴けり

犬の子のどこもやはらか野分

えつ見ねば秋風ばかり筑後川

棄てられし辻神たちの秋の暮

一茶忌の巻かぬ甘藍ばかり見つ

下下の下の鼻のしぐるる一里塚

榠櫨うまくなるすべ知らずでこぼこと

亡き父の持ちし榠櫨ぞ一茶享けよ

真白冬鶏幾百産むと並びをり

主婦二人一人はわかれたき白息

亡き友ら来やすかるべく古火鉢

蜩や硯の奥の青山河

硯の中にちちはは見ゆる合歓の花