月の波なめらかに高まりて潰ゆ
月を視しひとんまなざしわれに来ぬ
月照りて描きし眉もさやにみゆ
月冴えぬ熱く淹れたる茶のかをり
夜長し妻の疑惑を釈かず措く
秋の夜の妻に怒りて子を憚る
秋深し寝起わらはぬ子を笑はす
焼き立ての麺麭をかかへて秋ふかき
秋深しトーストにバタを厚く塗る
観月の逍遥子ろと飴を嘗め
月光に酒の香うごくまとゐあり
観月の飲食月の光に漏れ
月の芝冷酒の罎を置き傾げ
をなごらはあまきもの食み月の芝
月は常に映りバスは映り去る
霧を払ふ風白菊に吹きあたる
日の光白玉菊にわが肌に
白菊の今は照りはゆる日光充ち
黝し日の白菊の置く影は
菊皓とわが憂鬱に照りとほる