和歌と俳句

詞花和歌集

よみ人しらず
かくてのみ 世にありあけの 月ならば 雲かくしてよ 天くだる神

よみ人しらず
長き夜の くるしきことを 思へかし なになげくらむ 仮のやどりに

選子内親王
思へども 忌むとていはぬ ことなれば そなたにむきて 音をのみぞ泣く

神祇伯顕仲
あくがるる 身のはかなさは ももとせの なかばすぎてぞ 思ひしらるる

よみ人しらず
露の身の きえてほとけに なることは つとめてのちぞ 知るべかりける

関白前太政大臣忠通
よそになど 佛の道を たづぬらむ わが心こそ しるべなりけれ

左京大夫顕輔
いかで我 こころの月を あらはして 闇にまどへる 人を照らさむ

登蓮法師
世の中の 人のこころの うき雲に そらがくれする 有明の月