曾禰好忠
山城の鳥羽田の面をみわたせばほのかに今朝ぞ秋風はふく
僧都清胤
君すまばとはましものを津の國の生田の森の秋のはつかぜ
橘元任
おぎの葉にすがく糸をもささがにはたなばたにとやけさは引くらむ
花山院御製
たなばたに衣もぬぎてかすべきにゆゆしとやみむ墨染の袖
藤原顕綱朝臣
たなはたに心は貸すと思はねど暮れゆく空はうれしかりけり
加賀左衛門
いかなればとだえめけむ天の川あふ瀬にわたすかささぎの橋
左京大夫顕輔
天の川よこぎる雲やたなはたのそらだきもののけぶりなるらむ
大中臣能宣朝臣
おぼつかなかはりやしにし天の川年にひとたびわたる瀬なれば
修理大夫顕季
天の川玉橋いそぎわたさなむ浅瀬たどるも夜のふけゆくに
良暹法師
逢ふ夜とは誰かはしらぬたなばたのあくる空をもつつまざらなむ
藤原顕綱朝臣
たなばたの待ちつるほどの苦しさもあかぬ別れといづれまされり
祝部成仲
天の川かへらぬ水をたなばたはうらやましとや今朝は見るらむ
右大臣雅定
いかなればおなじ空なる月影の秋しもことに照りまさるらむ
左衛門督家成
春夏は空やはかはる秋の夜の月しもいかで照りまさるらむ
三条院御製
秋にまたあはむあはじも知らぬ身はこよひばかりの月をだにみむ
天台座主明快
ありしにもあらずなりゆく世の中にかはらぬものは秋の夜の月
藤原重基
秋の夜の月のひかりのもる山は木の下かげもさやけかりけり
良暹法師
天つ風雲ふきはらふ高嶺にて入るまでみつる秋の夜の月
源頼綱朝臣
秋の夜は月に心のひまぞなき出づるを待つと入るを惜しむと