和歌と俳句

夜長

茶筒かげそれも夜長の爐縁かな 蛇笏

火も置かず独居の人と夜長かな 碧梧桐

寝る時の湯浴静かに夜長かな 碧梧桐

越後屋に昔勤めし夜長かな 万太郎

赤彦
柿の皮剥きてしまへば茶をいれぬ夜の長きこそうれしかりけれ

長き夜の物書く音に更けにける 鬼城

長き夜や生死の闇にうつらうつら 鬼城

草原に月はた ゞある夜長かな 石鼎

窓の灯の軒ばを照らす夜長かな 石鼎

起居する影大なり夜長の灯 石鼎

夜長の灯動くと見えし障子かな 石鼎

玄関につけてある灯の夜長かな 万太郎

腰かけて框に人や茶屋夜長 石鼎

山家集夜長の塵をはたきけり 喜舟

ながき夜の枕かかへて俳諧師 蛇笏

食卓にまたゝくや夜長の小蝋燭 みどり女

長き夜や善い哉夫は愚妻は凡 草城

夜長の灯煌々として人在らず 草城

襖絵の鴉夜長を躍り居る 石鼎

たぎりたつ湯にさす水の夜長かな 万太郎

よそに鳴る夜長の時計数へけり 久女

髪巻いて夜長の風呂に浸りけり 久女

八木ぶしのすたれそめたる夜長かな 万太郎

長き夜の膳ごしらへや盆二つ 万太郎

門限に連れ立ち去りし夜長かな 久女

仰臥して腰骨いたき夜長かな 久女

仰臥して見飽きし壁の夜長かな 久女

寝返れば暫し身安き夜長かな 久女

絵襖の鶴翔けに翔け夜長かな 喜舟

こほろぎの高音にありし夜長かな 石鼎

天の川見えずなりたる夜長かな 青畝

犬吠にかかる船路や夜の長き 月二郎