ゑご船の漕ぎて散らばる梅雨の海
ゑご採の蓑笠ありく終ひ梅雨
鵜が渡る岬の下の梅雨にごり
荒梅雨や山家の煙這ひまわる
梅雨あけて奥の山より一つ蝉
暁の蝉が聞ゆる岬かな
奥能登や浦々かけて梅雨の滝
夏山や二三枚の田を頂に
浅葱に夏鶯をききにけり
飛魚の入りて輝く鮪網
田祭や深き茶碗にあづき飯
田祭や草木を渡るあゆの風
夏草に温泉宿はかくれけり
磐梯のうしろに並ぶ梅雨の山
梅雨寒や尼の肋骨数うべう
夏霧や四つ手かぶさる夏井川
ひるがほを踏みて眺めぬ塩屋崎
馬の客オオイタドリに触れて行く
鬼ケ崎夏鶯の遠音して
夏空のいよいよ遠し鹿湯越
新樹かげ朴の広葉は叩き合ふ
若葉して人に触るるや毒卯木
浅間山蟹棲む水の滴れり