田植女の手にひらひらと鮒あたり
岩がくれ草刈舟の棹せる
萱草の葉に一とすぢの黄いろかな
日もすがら唄を歌へり雨季に入る
枝かへてまださくらんぼ食べてをる
鮎笊をさげてぽんぽん橋を馳け
河骨にとどめし舟の吹かれ寄る
やや遅れ出てゆく母や田草取
飼馴れて河鹿の声も澄みにけり
母に強く犬に弱しや裸の子
杜若蕗の中なる山家かな
蛇籠より蛇籠へ渡り灸花
夜光虫尚漕ぎ戻る船のあり
水打つて暮れゐる街に帰省かな
ついてゆく揚羽蝶あり撒水車
空蝉やひるがへる葉にとりついて
松蝉や二つ三つづつとりついて
雨晴れてちりぢりにある金魚かな
塵とりて凌霄の花と塵すこし
軒端よりとび出づ雀雲の峰
清水のむかたはら地図を拡げをり
波ゆきて波ゆきて寄る海月かな
月見草つぼみのさきに花粉かな
み仏の前に二輪や月見草
とぶ虻に花粉の糸や月見草