和歌と俳句

篠田悌二郎

芦刈のしたたり落つる日を負へる

さびしくてならねば菊を買ひに出ぬ

さしてつくづく見れば菊さびし

蕎麦を刈るかかる真昼のかそけさに

秋桑を摘む音ばかり声もせぬ

父待ちついねし子の手の持てる

とんぼ追ふ子らにをさなくひとりゐる

めざめよき子なり芙蓉に抱きたつ

うれしさは捕りしとんぼをわかちゐる

咲いてきのふの夏をはるけくす

初萩になほあつき日の水をうつ

赤城見え黍の穂ゆれがわづらはし

草の実のこぼれ鮠とびこともなし

思へるはをさならのこと鉢の

鳴くやわけて今宵は身にちかく

に来るひまをぬすむも朝のうち

こころふとせかれつ去りしの前

菊つかれ巷のそらも疲れたる

梨ふくろ古り雲しろく湧きつ湧きつ

梨ふくろ古りつつ瀬々の鮎落ちぬ

梨ふくろ古りきちきちのこれを越ゆ

梨ふくろしろし秋の日しんと照り

熔岩のみちしづかなる日の咲けり

熔岩は灼け草ふく風は秋のかぜ

少年ら血はながしたれ蝉すずし