和歌と俳句

金葉和歌集

源俊頼朝臣
世の中は憂き身にそへる影なれや思ひ捨つれど離れざりけり

よみ人しらず
うち頼む人の心はあらち山越路くやしき旅にもあるかな

返し おや
思ひやる心さへこそ苦しけれあらちの山の冬のけしきは

参議師頼
いたづらに過ぐす月日を數ふれば昔をしのぶねぞ泣かれける

源師賢朝臣
かはり行くかがみの影を見るからに老蘇の森の嘆きをぞする

源顕国朝臣
こゆるぎのいそぎて逢ひしかひもなく波たち来ずと聞くはまことか

藤原公教
雲の上になれにしものを葦鶴の逢ふことかたにおりゐぬるかな

源俊頼朝臣
日の光あまねき空のけしきにも我が身ひとつは雲隠れつつ

周防内侍
なにか思ふ春のあらしに雲晴れてさやけき影は君のみぞ見む