生きの身燃えひとりいや二人だ燃えつゝ撃つ
燃ゆる街犬あふれその舌赤き
犬あふれ屋根の上にも人死ねり
燃ゆる街鉄輪の修羅馬の脚
街燃ゆる劫暑のにがき舌に飯
兵の暦紅衣少女のほかは弾
飢餓うすれ陽炎重く眠りたる
頭あり我あり発射弾快調
ひと疲れもの言はず鴉のど赤し
喇叭ふき人ら岩攀づ墜ちては攀づ
あるひは墜ち墜ちしまゝ手榴弾の音
人をめき岩攀づ鉄火そこに裂け
屍らに天の喇叭が鳴りやまず
雷電と血の兵が這ひゐたる壕
一斉に死者が雷雨を駆け上る
屍なほ闘へり月の炎あげ
愚かなる瞳は戦争の抜けし孔
秋風よ黄河文明の瘤ふたつ
軽快なリズムの苦行朝がくる
食ひあかずかなしきかなや天に風