和歌と俳句

片山桃史

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生きの身燃えひとりいや二人だ燃えつゝ撃つ

燃ゆる街犬あふれその舌赤き

犬あふれ屋根の上にも人死ねり

燃ゆる街鉄輪の修羅馬の脚

街燃ゆる劫暑のにがき舌に飯

兵の暦紅衣少女のほかは弾

飢餓うすれ陽炎重く眠りたる

頭あり我あり発射弾快調

ひと疲れもの言はず鴉のど赤し

喇叭ふき人ら岩攀づ墜ちては攀づ

あるひは墜ち墜ちしまゝ手榴弾の音

人をめき岩攀づ鉄火そこに裂け

屍らに天の喇叭が鳴りやまず

雷電と血の兵が這ひゐたる壕

一斉に死者が雷雨を駆け上る

屍なほ闘へり月の炎あげ

愚かなる瞳は戦争の抜けし孔

秋風よ黄河文明の瘤ふたつ

軽快なリズムの苦行朝がくる

食ひあかずかなしきかなや天に風

ほの青き毒針を見直せば愛し

情熱の百の破片を膝の日に

戦争は鶏冠を秋風に裂く

戦争は蝙蝠に月上れども

敵眠り我眠り戦場に月

ひとゝきの煙草三百余のいのち

水惜しむ兵を睡らせ煙草の花

叉銃線兵を睡らせたる劫暑

雨期の民工兵と濡れ火車遂に駛る

青胡桃日の縞生死談笑に

血の担架秋風は靴音に昏れ

劫暑の眼戦場の昼食短し

陽炎よ耳盲ふるは花の光か

生きてくふ飯荒寥とひとりびとり

飯をくふ顎骨は逞しきかな

婦喪服秋風帳をあふりたり

頑是なき人に銃擬す秋風裡

女去る秋風の兵を眼に視ざる

紅の鞋手榴弾秋の土間に蠅

木の葉落つおちて吹かれぬ歩くは兵