和歌と俳句

高浜虚子

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この寒さ身を引締めてつとめけり

山茶花の真白に紅を過まちし

洛北の殊に大原時雨かな

石庭に魂入りし時雨かな

わが癖や右の火鉢に左の手

冬日あり実に頼もしき限りかな

岩壁に這ひ上る如落葉積み

静なる落葉の下にわれは在り

掃く時も佇む時も落葉降る

ほこほこと落葉が土になりしかな

園丁の鉈の切れ味枯枝飛び

霜除に霜なき朝の寒さかな

冬梅の香の一筋の社頭かな

石蕗咲いて時雨るゝ庭と覚えたり

光りつゝ冬雲消えて失せんとす

時雨るゝとたゝずむ汝と我とかな

我心歩き高ぶる時雨かな

水涸れてこれぞ名に負ふ滑川

子規墓参今年おくれし時雨かな

谷々の家々にある冬日かな

我が額冬日兜の如くなり

よきのよき灰になるあはれさよ

母が餅やきし火鉢を恋ひめやも

埋火や稿を起してより十日

埋火の絶えなん命守りつゝ

別の間に違ふ客ある師走かな

志俳諧にありおでん食ふ

静なる我住む町の年の暮

君は君我は我なり年の暮

ふとしたることにあはてゝ年の暮