この寒さ身を引締めてつとめけり
山茶花の真白に紅を過まちし
石庭に魂入りし時雨かな
わが癖や右の火鉢に左の手
冬日あり実に頼もしき限りかな
岩壁に這ひ上る如落葉積み
静なる落葉の下にわれは在り
掃く時も佇む時も落葉降る
ほこほこと落葉が土になりしかな
園丁の鉈の切れ味枯枝飛び
霜除に霜なき朝の寒さかな
冬梅の香の一筋の社頭かな
石蕗咲いて時雨るゝ庭と覚えたり
光りつゝ冬雲消えて失せんとす
時雨るゝとたゝずむ汝と我とかな
我心歩き高ぶる時雨かな
水涸れてこれぞ名に負ふ滑川
子規墓参今年おくれし時雨かな
谷々の家々にある冬日かな
我が額冬日兜の如くなり
よき炭のよき灰になるあはれさよ
母が餅やきし火鉢を恋ひめやも
埋火や稿を起してより十日
埋火の絶えなん命守りつゝ
別の間に違ふ客ある師走かな
志俳諧にありおでん食ふ
静なる我住む町の年の暮
君は君我は我なり年の暮
ふとしたることにあはてゝ年の暮