和歌と俳句

大野林火

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夏草を蔽ひこぼせし捕虫網

海盤車赤しこどもらは昼寝の刻か

焼土を踏めば埒なくくぼむ梅雨

焼トタン錆を流しつ梅雨つづく

梅雨の土ひとを焼くべき薪を組む

梅雨の家並わづかにゆけば焦土見ゆ

片壁が残る病院跡炎天

炎天の川が焦土を抉るごと

炎日や人栖みくらきビルデイング

土用波固くとざせる壕舎の扉

夏雲高し壕舎巷をつくりゆく

セルの胸冷えてさみしき思ひなど

夕されば赤き金魚にひとを思ふ

河の匂ひ夏したたかに到りけり

すでに夏雨したたらす日覆さへ

友夏帽わが燈の及ぶ道に来つ

金魚選る母なるひとも打ち交り

本ひらきながき朝焼に身を托す

夕焼の電線一筋麦の上

呼吸ととのふる間も青嵐吹きつぎ来る

捨猫に夏草青く一坪ほど

祭の夜セルにはいまだ冷ゆれども

ぬかるみに蝙蝠影を弄ぶ

五月蚊帳ひとの寝息をこもらせぬ

葉桜の闇へつづける昼の路地