和歌と俳句

日野草城

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青竹の膚にひびけるは初蝉なる

棕梠咲けりじわりじわりとなける

薄暑なり葱坊主見てせうべんす

うすいろのつつじ三輪祇王寺に

紅つつじあやに萎えそめ滝ひびく

白日の夢縷々と河鹿鳴き冴ゆる

梅雨の水ながれながれてゆふべとなる

葉を襲ねかさねて暮るる若楓

尋めて来し河鹿ぞなける水の綾

河鹿瀬のつぶやきに音を浮かせ

歓送のどよめき夏日暮れてもきこゆ

鬱然と征く暁の大梅雨を

梅雨太し軍帽に肩に軍刀に

天よりす豪雨地表を覆ひたり

地を覆ふ豪雨の流れ靴に乗る

ただれたる胃壁に夜もひびく梅雨

炎天に現れて聳ゆる紫金山

熱風に麦なびく麦の青げしき

太陽光垂直に射おろして灼く

人血のあふれては乾く千里の

戦火去り壁の群落の海に

爆撃機爆弾孕めり重く飛ぶ

破声はるかなりは夕映ゆる

暮れぬ流弾笛をふいて飛ぶ