和歌と俳句

日野草城

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みことのりうけたまはると妻子らと

おんこゑのまぎれがちなり汗冷ゆる

おもひきや戦をとざすみことのり

おんこゑのくごもりたまふかしこしや

御齢わがよはひなりかしこしや

戦果つ草深にをるうかららに

戦果つ残る暑さのきびしきに

二上山を瞻てをりいくさ果てしなり

煮ざかなに立秋の箸なまぐさき

病む人の秋の昼寝ぞしづかなる

つきしろや遠きラヂオのユモレスク

鉦叩昼もたたけりしづかなる

噛みくだく眠りぐすりやかねたたき

こころよく痰の切れたる盆の月

盆の月こよひは盈ちぬ照りにけり

晨朝の殺生根切虫居りて

わが不眠石もねむれぬ夜と思ふ

茗荷汁ほろりと苦し風の暮れ

なほ温し秋のひるげの蒸しぱん

いちじくのけふの実二つたべにけり