和歌と俳句

日野草城

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秋涼し寝汗もなくて昼寝ざめ

秋涼し妻の謡曲きこえをり

秋夜曲雨のかなたにきこえけり

秋の雲流れ軽音楽弾み

じわじわと煙のにほふ秋の暮

病めるわが血を吸ふ秋の蚊あはれ

夜々の月夜々に盈ちつつ秋涼し

天の刻移り大円渉る

天の月地に病めるわれ相対ふ

望の月はばかる雲を照らしけり

旬日のひげも剃らずにけふの月

望の夜もともしび明く病みにけり

月を観に出でし妻のこゑすなり

今しもやさしのぼるらしけふの月

月を観るわが子わが妻こゑひびく

病むわれに妻の観月短かけれ

観ることのかなはぬの裾明り

十六夜や溲瓶かがやく縁の端

秋の雨しづかに午前終りけり

こころよし残暑の雨のしたたかに

秋の昼妻の小留守をまもりけり

秋深しこころごころに環らるる

朝な朝な南瓜を撫しに出るばかり