和歌と俳句

日野草城

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相寄りて離れて石の親疎かな

白露に石のおもざしかはりけり

石たちの思ひをかはす月夜かな

鳴いて石のいのちのしづかなる

長き夜はひとりつぶやく石もあらむ

石眠り寝待の月に照らさるる

御厨子の扉ひらきまつるや爽かに

こもります厨子の漆黒露の灯に

天高し新日本國憲法に

秋日満つ日本歴史の曲り角

新しき秩序秋日を照り返す

進水の大船菊の花を舳に

いにしへゆかがよふ菊を国の紋

秋の風船は取舵いつぱいに

菊日和天皇幸く在せ民と

七夕や逢へばくちびるのみとなる

星月夜つめたき鼻の触れ合ひし