和歌と俳句

日野草城

33 34 35 36 37 38 39 40 41 42

や暮るるを嘆く木々の幹

樹の幹の数がわからぬ秋の暮

秋の暮そこらばたばた暗くなる

暮れそめてはつたと暮れぬ秋の暮

灯影さして樹の寝姿の見えにけり

鳴き猛るにおどろく木の葉かな

平凡な日々のある日のきのこ飯

勉強の秋燈一つのみ更くる

望の月はばかる雲を照らしけり

秋草に歩みをとどむる足袋白き

睡れるにあらず秋草の影を頬に

秋くさの昃りて晴れしあかるさよ

若き日の校歌くちずさみ秋くさに

たえだえに入日のひほふすすきの穂

すすきの穂ゆれて月光ひびくなり

つきかげのあまりてけむるすすきの穂

鵙猛り外厠より美貌出づ

ひそかにわがおもふひとも菊の客

玉菊や日照雨の露きらきらと

菊の径客をみちびきつつも恋ふ

の前話のつぎほとだえがち

菊畑の夜霧にも言ひそびれける