芭蕉葉やまぶしくも日のありどころ
箱庭も秋のけしきに寂びにけり
日輪のさやかに見ゆる芙蓉かな
妬ましき芙蓉の紅や老を知る
初風や草の中なる吾亦紅
うそ寒く読み終へぬ雨月物語
行く秋や残るトマトの青きまゝ
山坊や夜霧に濡るゝ大障子
渋柿のつれなき色にみのりけり
好み着る黒き羽織や秋袷
地味なれど人の形見や秋袷
老の手にしつかりとうつ碪かな
草の戸やいみじう古き砧盤
天上の恋をうらやみ星祭
くさぐさの果ちひさき盆供かな
実となりし萩にはげしき風雨かな
あけすけに花ぞこ見する桔梗かな
たゝなはる八重山みちや葛の花
白粉の花小夜更くる籬かな
干傘や日に照らさるゝ萩のつゆ
うそ寒や日の出待つ間の浪の音
走馬燈夜毎ともして子と住めり
走馬燈こゝろに人を待つ夜かな
ひとりみるわが手枕や走馬燈
手にもてる団扇にきたり秋の風