和歌と俳句

原 石鼎

19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29

蜘蛛の糸の一筋光り旱雲

起きんとす浪の浅黄や夏の海

青芒ぼうぼうとして夏の海

浜砂に早とぶ蜻蛉夏の海

月さすや夜泳の人の上り来し

夜光虫櫂見ゆるまで燃えにけり

月の出の漸くさびし夜光虫

土用波海女が笛かと聞きすます

去りがてのうしろ淋しや土用波

土用波その余波もまた大いなる

寝冷人うすき布団を腹の上

寝冷人の臍を退れる蠅一つ

散らんとす葉蔭の蓮を人しらず

風に起きる蓮の浮葉の大いさよ

涼風や木の間に見ゆる百日紅

しめやかに夜は土ねむる百日紅