蜘蛛の糸の一筋光り旱雲
起きんとす浪の浅黄や夏の海
青芒ぼうぼうとして夏の海
浜砂に早とぶ蜻蛉夏の海
月さすや夜泳の人の上り来し
夜光虫櫂見ゆるまで燃えにけり
月の出の漸くさびし夜光虫
土用波海女が笛かと聞きすます
去りがてのうしろ淋しや土用波
土用波その余波もまた大いなる
寝冷人うすき布団を腹の上
寝冷人の臍を退れる蠅一つ
散らんとす葉蔭の蓮を人しらず
風に起きる蓮の浮葉の大いさよ
涼風や木の間に見ゆる百日紅
しめやかに夜は土ねむる百日紅