ゆふみづきに微塵の露や雨の中
夕月や売られ行く鐘に夏埃
日と我の間恋しや雲の峰
やや浮いて去りし鯰や雲の峰
畑物に大地さびしや雲の峰
いつの世にか亡ぶる我に雲の峰
夜の雲のみづみづしさや雷のあと
人去つて猿臀を掻く夕立雲
夕立の空見つ猿奴またたきつ
夕立の今はとどろく森の中
壇を這ふ金亀子影を離れ飛ぶ
絽羽織の肩打つて金亀子葉に帰る
くれの鐘撞くだけついて毛虫寺
葉の縁に添うてのび居る毛虫哉
滝をのぞく脊をはなれゐる命かな
水打つや焦土騒げるさまにあり
撒水の水燦々と夕日哉
松の葉を引き張る蜘蛛や夏の月
松の下楓の上や夏の月
氷噛むこめかみ光り雷暗し
漏れ日さす底に出てゐし金魚哉
星降るや金魚蔽はむ心あり
松の芯皆逆しまや金魚池
水兵が青梅買うて喰ひけり
炎天に梅干食うて尼が唇