和歌と俳句

原 石鼎

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雨やんで尚さす傘や栗の花

栗の花上ほど若くうす緑

白雲や椎の花ふる真午中

向日葵活けて妻は仏の心かな

向日葵の瓣の乱れや蕊にまで

葉がくれて見ゆる白さや梅雨の月

早苗田の影のみだれや梅雨の月

苔の花暮れて満月樹の間より

金亀子落つるや逃げし苔の花

塀外に鳴る大鐘や苔の花

でで虫の腹やはらかに枝うつり

暁の蟻食ふ蟇としりにけり

青蛙花屋の土間をとびにけり

雨蛙カンナの花に鳴きにけり

雑司ケ谷雨のはれ間の桜んぼ

葉二枚のはざまに赤し桜んぼ

口赤く啼く眼みどりや鴉の子

地を這うて地を照らしたるかな

大雨にやがてとびたる蛍かな

葉桜の風雨に光る蛍かな

灯の下に来て知る袖の蛍かな

藺の中より広く照り出し蛍かな

濁水に蓮の浮葉や水馬

水馬ながるるほどを上りけり

を焼く煙上げたる小家かな