和歌と俳句

原 石鼎

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初夏の三日月金や雲の中

獅子の毛の日にあざやけき若葉かな

大風に池の面うつ若葉かな

柳長くのりて垂れゐる若葉かな

蚊遣香の青の螺旋や若葉窓

衣更へし人の背見ゆれ若葉窓

校名の茶碗の藍や若葉窓

短夜や戸のうちを行く燈の見えし

白重いつもの顔に嫁ぎけり

とり出す蚊帳のみどりや梅雨の晴

上げ潮に乗り来る舟の蚊遣り

大川は引潮時の蚊遣かな

あぢさゐの乾きかはける花に梅雨

今年から牡丹咲いたぞ庵雀

牡丹咲いて我を恐るる庵雀

夕さればおのづと萎む牡丹かな

傍に楓細木や白牡丹

夕べ復吹き来し風の牡丹かな

梅天や色さめざめと杜若

から梅雨や閂させし門の内

掃きよせし八ツ手古葉に梅雨入かな

小扇や影ちらちらと梅雨畳

空梅雨の大地にうすき光り哉

うるみゐし星やがてなし梅雨の空

いつか死ぬ我今見入る梅雨の星