初夏の三日月金や雲の中
獅子の毛の日にあざやけき若葉かな
大風に池の面うつ若葉かな
柳長くのりて垂れゐる若葉かな
蚊遣香の青の螺旋や若葉窓
衣更へし人の背見ゆれ若葉窓
校名の茶碗の藍や若葉窓
短夜や戸のうちを行く燈の見えし
白重いつもの顔に嫁ぎけり
とり出す蚊帳のみどりや梅雨の晴
上げ潮に乗り来る舟の蚊遣り哉
大川は引潮時の蚊遣かな
あぢさゐの乾きかはける花に梅雨
今年から牡丹咲いたぞ庵雀
牡丹咲いて我を恐るる庵雀
夕さればおのづと萎む牡丹かな
傍に楓細木や白牡丹
夕べ復吹き来し風の牡丹かな
梅天や色さめざめと杜若
から梅雨や閂させし門の内
掃きよせし八ツ手古葉に梅雨入かな
小扇や影ちらちらと梅雨畳
空梅雨の大地にうすき光り哉
うるみゐし星やがてなし梅雨の空
いつか死ぬ我今見入る梅雨の星