若竹の着いてははなる風の屋根
烈日やころげし雹に草の影
巣から飛ぶ燕くろし五月晴
百合かいで親をめぐれる子馬かな
百合かぐや忽ち走る仔馬かな
わが行くにつれてうね見ゆ青田道
潮木ふむ鴉の爪や雲の峰
高原や雷落として草の丈
雷やんで夕陽雲の下にあり
月隠す雲一団や草の雷
老い毛虫うす日を這うて憤り
滝見客襖一重の旅籠哉
岩藻皆立ちて揺れゐる清水哉
清水掬んで底の形やしかと見し
潮たるる藻草見て立つ浴衣かな
行水の汝が抱くものに大タオル
一度吐きし餌に又よりし金魚の瞳
ほのぼのとうす藻のひげとある金魚
しづまれど金魚をどれるさまにあり
よる人の手に小扇や花氷
炎天や土をかむつて小草の芽
炎天やけづりかけある庭の苔
炎天や溶けて消えたる露一顆
炎天や柘榴細枝に葉と花と
炎天の大駅汽鑵をとぼしけり