和歌と俳句

高浜虚子

前のページ<<

掃きすてし今朝のほこりや霜柱

煙突の煙棒のごと冬の雨

石蕗の葉に雪片を見る かな

大船や帆網にからむ冬の月

日曜にあたりて遊ぶ冬至かな

今日はしも柚湯なりける旅の宿

餅搗くや草の庵の這入口

ふさはしき大年といふ言葉あり

垂れ下る氷柱の紐を結ばばや

惨として驕らざるこの寒牡丹

寒菊や年々同じ庭の隅

鎌倉や冬草青く松緑

大寒の埃の如く人死ぬる

寒紅梅馥郁として招魂社

冬梅の既に情を含みをり

満開にして淋しさや寒桜

雪かぶる日もありて咲く冬椿

椿咲きその外春の遠からじ

柊を挿す母によりそひにけり

吉田屋の畳にふみぬ年の豆