高浜虚子
掃きすてし今朝のほこりや霜柱
煙突の煙棒のごと冬の雨
石蕗の葉に雪片を見る 霙かな
大船や帆網にからむ冬の月
日曜にあたりて遊ぶ冬至かな
今日はしも柚湯なりける旅の宿
餅搗くや草の庵の這入口
ふさはしき大年といふ言葉あり
垂れ下る氷柱の紐を結ばばや
惨として驕らざるこの寒牡丹
寒菊や年々同じ庭の隅
鎌倉や冬草青く松緑
大寒の埃の如く人死ぬる
寒紅梅馥郁として招魂社
冬梅の既に情を含みをり
満開にして淋しさや寒桜
雪かぶる日もありて咲く冬椿
椿咲きその外春の遠からじ
柊を挿す母によりそひにけり
吉田屋の畳にふみぬ年の豆