和歌と俳句

衣更 ころもがえ

更衣裾をからげて帚持ち 虚子

世の憂さのまとふ衣を更へにけり 風生

煎豆をかぞへかみつつ更衣 楸邨

更衣豆腹の豆負ひかへり 楸邨

雲はみな動きめぐるや更衣 楸邨

衣更へて静かに翁さび住める 立子

ひとまはりちがふ夫婦や更衣 真砂女

更衣ひとを疑ふこと知らず 波津女

汐風の強きをいとへ更衣 真砂女

石段の雨瀧なせり更衣 万太郎

かなしみをもたぬひとなし衣更 波津女

海日々にまぶしさ増すや更衣 真砂女

更衣水にうつりていそぎつつ 多佳子

衣更雀の羽音あざやかに 多佳子

窓あけて翠微の中や更衣 石鼎

われのみと思ふ不幸や更衣 真砂女

更衣胸の創痕うち嚢む 波郷

身の細るほどの苦労や更衣 真砂女

わが家みな手を目立たしめ更衣 節子

衣更前もうしろも風に満ち 多佳子

衣更老いまでの日の永きかな 多佳子

葉疊に牡丹は帰しぬ更衣 爽雨

更衣したる筑紫の旅の宿 虚子

ものなくて軽き袂や衣更 虚子

現し世を日々大切に衣更 立子

娘とは嫁して他人よ衣更 立子

更衣食のほそりはいはずけり 万太郎

亡き人に肩叩かれぬ衣がへ 万太郎

眠けまだ去らぬ目とぢぬ衣がへ 万太郎

衣がへ看護づかれの見ゆるかな 万太郎

更衣あはれ雀のきげんかな 万太郎

割り切つてものをいへばや更衣 万太郎

旅五日目土佐へ入るより更衣 悌二郎

老夫婦二階住して更衣 風生

いくばくの余命を得たり更衣 林火