和歌と俳句

村上鬼城

榛名山大霞して真昼かな

爪を切るほうけ話や昼霞

石ころも霞みてをかし垣の下

夕霞烏のかへる国遠し

落る日を山家さみしくかすみけり

陽炎や鵜を休めたる籠の上

摘草や帯引きまはす前後ろ

摘草や笊市たちて二三軒

松風のごうごうと吹くや蕨取り

蕨たけて草になりけり草の中

蕨出る小山譲りて隠居かな

根杭を打ち飛ばしけり芹の中

芝焼けて蒲公英ところどころかな

蓮華野に見上げて高き日ざしかな

猫のゐてぺんぺん草を食みにけり

咲きぬ三味線草にならであれ

春の日や高くとまれる尾長鶏

あかあかと大風に沈む春日かな

遅き日や家業たのしむ小百姓

遅き日の暮れて淋しや水明り

永き日の自ら欺くに由もなし

長閑さや鶏の蹴かへす藁の音

長閑さやてふてふ二つ川を越す