和歌と俳句

橋本多佳子

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13

まどゐの燈ときに暗しや凍つるか

赤彦の氷魚かも真鯉生きて凍て

月一輪凍湖一輪光りあふ

寒天煮るとろとろ細火鼠の眼

雪の上餌あるや雀胸ふくらみ

白き山白き野寒天造りの子

雪の酒庫男の手力扉を開くる

酒湧くこゑ槽に梯子をかけ覗く

赤子泣き覚めぬひとの家雪明し

寒念仏追ひくる如く遁げゆく如く

落葉松を仰げば粉雪かぎりなし

雪原や千曲が背波尖らして

遠灯つく千曲の枯れを見て立てば

藁塚も屋根も伊吹の側に雪

直哉ききし冬夜の筧この高さに

寒き壁と遊ぶボールをうち反し

綿虫飛ぶ天光の寵暮るるとも

風邪の髪解けざるところ解かず巻く

黄八丈の冷たさおのがからだ冷ゆ

佛寒しわめける天邪鬼に寄る

天邪鬼木枯しゆうしゆう哭く音立て

凍てゆくなべ壊れやまざる吉祥天女

虎落笛吉祥天女離れざる

地を掘り掘る狐隠せしもの失ひ

われに向く狐が細し入日光