和歌と俳句

橋本多佳子

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縄とびをするところだけ雪乾く

日照るときの善意のかがやけり

めざむよりおのが白息纏ひつつ

対丈の着馴れし冬着に手足出し

天の青さ広さ凍て蝶おのれ忘れ

月明し凍蝶翅を立て直す

絶対安静降りくるに息あはず

生るはよし静かなる雪いそぐ

まぶしひとと記憶のかさならず

きしきしと帯を纏きをり枯るる中

かじかむや頭の血脈の首とくとく

撃ちもたらす鴛鴦どこよりか泥こぼす

踵深き静塔のあと千鳥の跡

雪嶺が遠き雪嶺よびつづけ

炉火いつも燃えをり疲れゐるときも

みつみつと積る音わが傘に

十指の癖一と冬過ぎし手袋ぬぐ

群羊帰る寒き大地を蔽ひかくし

寒き落暉群れを離るる緬羊なく

風邪の眼に解きたる帯がわだかまる

除夜浴身しやぼんの泡を流しやまず

霜月夜細く細くせし戸の隙間

寒き肉体道化師は大き掌平たき足

いま降りし寒き螺旋階の裏が見え