和歌と俳句

高浜虚子

先づ女房の顔を見て年改まる

日輪は古びて廻り年新た

若水や妹早くおきてもやひ井戸

三園を抜けて福神詣かな

年禮の城をめぐりて暮れにけり

年玉の十にあまりし手毬かな

故郷の母と姉との初便

鎌倉の古き宿屋の松飾り

輪飾の少しゆがみて目出度けれ

煙突に注連飾して川蒸汽

歯朶勝の三方置くや草の庵

楪の赤き筋こそにじみたれ

手毬唄かなしきことをうつくしく

獅子舞の藪にかくれて現れぬ

三條の橋を背中に傀儡師

三方に登りて追はれ嫁が君

縫ぞめ堺の鋏京の針

売初や町内一の古暖簾

はだかりし府中の町の初荷馬

新しき櫛や油やすき始め

まだ何も映らでありぬ初鏡

老の頬うつりてをかし初鏡

敷舞台拭き清めあり謡初

弾初の姉のかげなる妹かな

病人のある気がかりや初芝居

吾妹子が敷いてくれたる宝船

出初式ありて湘南草の庵

書襖の金泥古し小松引

餅花と女房に狭き帳場かな

注連貰の中に我子を見出せし

轍あと絶えざる門や鳥總松

薮入や箪笥の上の立て鏡