冬滝を日のしりぞけば音変る
機関車が身もだへ過ぐる寒き天
藁塚の茫々たりや伊賀に入る
冬菜畑伊賀の駅夫は鍬を振る
冬浜に老婆ちぢまりゆきて消ゆ
沖へ向き口あけ泣く子冬の浜
干甘藷に昨日の日輪今日も出づ
からかさを山の蜜柑がとんと打つ
まくなぎに幹の赤光うすれゆく
なくなぎの阿鼻叫喚を吹きさらふ
まくなぎの中に夕星ひかり出づ
木枯や馬の大きな眼に涙
木枯やがくりがくりと馬しざる
木枯は高ゆき瓦礫地に光る
焼けし樹に叫び木枯しがみつく
寒月に瓦礫の中の青菜照る
寒月光電柱伝ひ地に流る
卵一つポケットの手にクリスマス
甘藷蒸して大いに啖ふクリスマス
凍て天へ脚ふみ上げて裸の鶏
玻璃窓を鳥ゆがみゆく年の暮
年去れと鍵盤強く強く打つ