やりすごす湖の疾風や種下ろし
藤咲くや瀬がしらはしるあめの魚
朝市や峠越え来し夏蕨
蛙田や残雪うつす笠ヶ岳
櫻咲き五月の峠雪舞へり
春疾風木々が鞭打つ湯の湖見ゆ
白樺の花の塵かも温泉を流れ
夏蝶や平家邑とて揚羽蝶
芍薬や月山拝む山の邑
かつしかは葛餅どころ葭雀
ならぶ橋一つほのめく盆の市
初蝉やたがはず来鳴く梅の幹
炎天の熱き茶胸を通りけり
吟じつつみんみん幹を下りきたる
はたはたの飛ぶ野かさねて駒ケ岳
昼顔の露けさたもつ湖の前
山月や葛ともまがふ山葡萄
虫更けぬ黒姫山の肩の月
ふもとの灯消えよ花野の日の出前
花野の日出でて野尻湖はるかなり
月隠す山高ければ星月夜
山月や雲海西にしりぞきて
檻にして野うさぎまろし萩の月